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セルトレイ・育苗トレー入門|種類と選び方・育苗の流れ

セルトレイ・育苗トレーの違い、72穴・128穴・200〜256穴の選び方、用土、水やり、根鉢から鉢上げまでを初心者向けに解説します。

執筆:花の日記 編集部 公開 更新
花の種と培養土を入れたセルトレイで苗を育てる様子

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セルトレイは、小さな区画ごとにと土を入れ、苗を1株ずつ育てる育苗トレーです。園芸店では「セルトレイ 育苗トレー」と並べて探されますが、選ぶ基準は穴数の多さではありません。育てる株数、毎日確認できる水分、上げまでの期間を先に決めると、72穴 (Amazon / Yahoo!)・128穴 (Amazon / Yahoo!)・200〜256穴の候補を絞れます。

はじめに

セルトレイ売り場で迷いやすいのは、外形が似ていても穴数と1セルの容量が違うからです。たくさんまける小セルは一見効率的ですが、土の量が少ないぶん乾燥が速く、早めの移植も必要になります。反対に大きめのセルは置き場所を取るものの、水分と根域に余裕があります。

本記事は、平鉢へまとめてまいた種の根が絡んだ経験があり、今度は花苗を20〜40株ほど分けて育てたい人を想定しています。種まき全体の時期や品種別管理は花の種まきと苗づくり完全ガイド直まき向きかどうかの判断は別記事へ分け、ここでは容器の選択とセルトレイ内の管理に集中します。

セルトレイ・育苗トレーとは

セルトレイは、を独立した小区画で育てる育苗トレーの一種です。平らな育苗箱と違い、種、用土、根がセルごとに分かれるため、発芽しなかった区画を見分けやすく、移動時にも隣の苗の根をほどく作業を減らせます。

「育苗トレー」は苗づくりに使う容器全体を指す広い呼び方です。その中に、仕切りのない平トレー、連結ポット、セルトレイ、セルトレイを載せる受けトレー (Rakuten / Amazon / Yahoo!)があります。「プラグトレイ」もほぼ同じ用途の呼称で、セルから抜いた苗が根と用土の塊になった状態をプラグ苗と呼びます。

育苗とは、畑や鉢の最終位置へ直にまかず、管理しやすい容器で苗を作ることです。LOVEGREENは「ピートモス (Rakuten / Amazon / Yahoo!)やバーミキュライトなどの清潔な土を入れ、種をまいて苗を育てることを育苗(いくびょう)といいます」と説明しています。苗を個別に扱える点は便利ですが、セルが小さいほど水分と根域の変化も速くなります。

セルトレイが向くのは、多数の小さな種を同じ条件で発芽させたい場合、発芽数にばらつきがあり欠株を区画単位で確認したい場合、苗を動かしながら日当たりを調整したい場合です。一方、移植を嫌う植物や、数粒だけを最終鉢で育てる場合は、最初からポットへまくほうが工程を減らせます。播種後に弱い苗が複数出たときの残し方は苗の間引き方法で詳しく扱っています。

セルトレイの種類と穴数の選び方

セルトレイの穴数は、育てたい株数よりも「1セルの土をどれだけ頻繁に確認できるか」で選びます。穴数が増えるほど1株あたりの用土量が減り、乾きやすく、根がセル内へ回るまでの時間も短くなるからです。

家庭園芸で見かける代表的な候補を、管理の性格で整理すると次のようになります。メーカーによって外形や深さは違うため、同じ穴数でも購入前に1セルの寸法とトレー全体の寸法を確認してください。

穴数の目安1セルの余裕乾燥の速さ管理頻度向く使い方
50〜72穴大きめ比較的ゆっくり毎日を基本に余裕あり少数の花苗、鉢上げを急ぎたくない初心者
128穴中程度中程度毎日確認20〜80株程度、多品種を少しずつまく場合
200〜256穴小さい速いこまめな確認が必要多数の苗、短い育苗期間、管理設備がある場合

ユタ州立大学エクステンションアブラナ科移植苗資料では、128セルが一般的で、256セルは1株あたりの費用を抑えられる一方、より多くの管理を要すると説明されています。「Smaller-celled trays (256s) cost less per plant but require more management.」という一文は、小セルの省スペース性がそのまま省力化を意味しないことを端的に示しています(原文英語)。

家庭で大きさを想像する手掛かりとして、LOVEGREENの記事には128穴・600×300×44mmのセルトレイを必要な大きさへ切って使う例があります。切り分け可能な薄型品なら、30株だけ育てるのに128セル全体を埋める必要はありません。ただし、切ると外周の強度が落ちる場合があるため、受けトレーへ載せて運びます。

72穴は、初めての花苗づくりで水切れの余裕を取りたい人に向きます。128穴は株数と置き場所のバランスがよく、毎日状態を確認できるなら扱いやすい中間です。200〜256穴は多数の苗をそろえる用途に合理的ですが、週末しか世話できない家庭には不向きです。穴が余ることより、乾燥を見落として全体を弱らせるほうが損失は大きくなります。

セルトレイに合わせる用土と受けトレー

育苗用土は、セル間で量をそろえながら、空気の通り道を押し潰さないように詰めます。セルトレイでは土の容量が少ないため、庭土や使い古した鉢土ではなく、清潔で粒が細かく、保水と排水のバランスを取った種まき用土 (Rakuten / Amazon / Yahoo!)が安全です。

育苗用土 (Rakuten / Amazon / Yahoo!)には、ピートモスのように水を保つ材料と、パーライトのように空隙を作る材料が配合されることがあります。ここでいう保水性は水をため続ける意味ではなく、種の周囲を急に乾かさない性質です。排水性保水性は反対ではなく、余分な水を逃がしつつ必要な水分を保持する組み合わせとして考えます。

マサチューセッツ大学アマースト校の温室栽培資料は、「Avoid compaction of growing media.」と明記しています(原文英語、訳:用土の圧縮を避ける)。容器へ軽く入れ、上面の余分を払うこと、ピート主体のプラグ用土は充填前に加水して通気性を作ることも示しています。プラグ用土への事前加水は十分な量が必要だと記載されていますが、家庭では配合ごとに吸水性が違うため、固定した数値を一律に再現するより、握って水が滴らず軽くまとまる状態から始めるほうが安全です。

土を均一にすることと、強く押し固めることは別です。セルの一部だけ用土が少ないと根張りと乾燥速度に差が出ますが、指で強く詰め込むと空気量が減ります。トレーへ用土を広げ、軽く落ち着かせ、へこんだセルへ追加し、表面をならします。種を置く深さは種袋の指示を優先してください。

排水穴は、余分な水の出口であり、底面給水の入口でもあります。穴のない受けトレーは室内の水漏れ防止に便利ですが、常に水を張ったままセルトレイを密着させると、底面の空気を遮りやすくなります。給水するときだけ浅く水を入れ、用土が吸ったら残り水を捨てる使い方が基本です。

受けトレーを選ぶときは、セルトレイの外寸、底の凹凸、排水穴を塞がないかを確認します。トレーを持ち上げたときに中央がたわむ薄型品は、穴の多い育苗箱 (Rakuten / Amazon / Yahoo!)や平らな台へ載せると運びやすくなります。用土を入れてから持ち上げる場面まで想像すると、価格だけで選ぶ失敗を減らせます。

セルトレイ育苗の流れ

種まきから根鉢確認までの流れは、用土を入れる、播種する、発芽条件を保つ、光と水を調整する、移植時期を見極める、の順です。セルトレイは各工程をセル単位でそろえる道具であり、トレー自体が発芽を保証するわけではありません。

flowchart TD
  A[育てる株数と管理頻度を決める] --> B[穴数と受けトレーを選ぶ]
  B --> C[清潔な用土を均一に入れる]
  C --> D[種袋の深さで播種する]
  D --> E{発芽したか}
  E -->|未発芽| F[温度・水分・覆土を確認]
  E -->|発芽| G[被覆を外し光と風を確保]
  G --> H[根鉢を見て鉢上げ・定植]

セルトレイ選びから発芽後の根鉢確認までを、戻り分岐を含めて示した育苗フローです。

用土をセルへ均一に入れる

用土は先に軽く湿らせ、乾いた部分と過湿な塊を残さないよう混ぜます。セルトレイへ広げた後は、持ち上げて軽く落ち着かせ、沈んだセルだけ補います。Amoniは、軽いセル培土は上から入れただけでは十分に詰まらない場合があると説明しています。ただし、空隙を潰すほど指で圧縮してはいけません。

種袋の覆土と発芽条件を優先する

発芽には水分、温度、酸素が必要で、植物によって光への反応も違います。種を各セルへ置き、覆土の深さは種袋の表示に合わせます。細かな種へ勢いよく水を当てると位置がずれるため、細かな散水か短時間の底面給水で全体を湿らせます。

発芽まで乾燥防止の紙やカバーを使う場合は、毎日セルを確認します。LOVEGREENは「発芽したら新聞紙をとって、日中太陽の光に当てましょう。」と注意しています。光を必要とする種では、発芽前から被覆が適さない場合もあるため、品種ごとの指示が優先です。

発芽後は光・風・水の順に見直す

発芽後は、水やりを時刻だけで決めず、表面色、トレーの重さ、苗の張りを組み合わせて判断します。表面だけ乾いて内部が湿っているときに追加すると過湿になり、反対に小セルは晴天や風で急速に軽くなります。朝に確認し、必要なら午前中に給水すると、夜まで葉と表面が乾く時間を取りやすくなります。

発芽後は日光または十分な育苗光 (Rakuten / Amazon / Yahoo!)を確保します。窓際は明るく見えても片側からしか光が来ないため、トレーの向きを変えて傾きを抑えます。低温期の加温と光量の組み合わせは別記事の範囲ですが、温度だけを上げて光が不足すると茎が伸びやすくなります。

根と葉を同時に見て次へ移る

セルトレイ育苗の終わりは、カレンダーだけでは決めません。ユタ州立大学のアブラナ科資料では、播種後6〜8週で本葉5〜7枚が移植サイズの一例とされていますが、花は種類と温度で大きく違います。根が用土を適度に抱き、底穴から長く伸び切る前で、地上部がセル容量に対して窮屈になった時点を判断材料にします。

セルトレイ育苗で失敗しやすいポイント

苗立枯病、乾燥、徒長は、セルトレイ育苗で症状が似て見えやすい失敗です。倒れた苗へ一律に水を足すのではなく、用土の湿り、地際の傷み、茎の長さ、光の方向を順に確認します。

水をため続けて根と地際を弱らせる

苗立枯病は、幼苗が地際から細くなって倒れたり、種や根が土中で腐敗したりする病害です。LOVEGREENは使い古した土について、病原菌の元となるカビの影響で幼苗が苗立枯病にかかることがあると説明しています。清潔な用土を使い、受けトレーへ水をため続けず、発芽後は風を通します。

セル表面が乾いていても、底が水へ浸かったままなら根の周囲は過湿です。セルトレイを持ち上げ、受けトレーの残り水と底穴を確認してください。水やり後に毎回重さを覚えると、表面の色だけより内部の水分を判断しやすくなります。

小セルを選び、乾燥確認が追いつかない

200〜256穴の小セルは、多数の苗を同じ面積で始められる反面、1セルの水分が少なくなります。Minorasuのネギ育苗例では、200穴トレイ60枚を使う大規模な資材計画が示されており、小セルは均一な管理や設備と組み合わせるほど利点が出ます。家庭で20〜40株だけなら、空間効率を最大化するより管理の余裕を残すほうが現実的です。

ただし、穴数が少なければ失敗しないわけではありません。 大セルでも受けトレーへ水をため続ければ過湿になり、日陰へ置けば徒長します。穴数は失敗の原因そのものではなく、管理間隔と育苗期間に合わないときに問題を増幅する条件です。

発芽後も被覆を残し、光が遅れる

徒長は、茎が細長く軟弱に伸びた状態です。発芽後も紙やドームを残し、暖かいまま光が不足すると起こりやすくなります。発芽を確認したセルから光へ移し、強い直射へ急に出すのではなく、明るさと風へ段階的に慣らします。

種が出ないセルの診断は、温度、水分、覆土、種の状態を切り分ける必要があります。ここで周囲の発芽済み苗へ水を追加し続けると別の問題を作ります。発芽しない原因を詳しく確認したい場合は、該当記事が完成するまでは種袋の発芽適温と覆土表示を基準にしてください。前年の種を使う場合は、種の保存状態も確認材料になります。

根鉢を崩さず鉢上げ・定植へつなぐ

根鉢は、根が用土を適度に抱え、セルから抜いても崩れにくくなった状態です。本葉の枚数だけでなく、セル底の根、苗の抜け方、用土のまとまりを合わせて見ると、早すぎる鉢上げと根詰まりの両方を避けやすくなります。

Amoniは「育苗箱を地面から浮かせて育苗を行うことでトレイ底面が空気に触れる」と説明しています。底面が地面へ密着したままだと根がトレイ外へ伸び、引き抜くと根鉢が崩れやすくなります。穴の多い育苗箱やベンチへ載せ、給水時以外は底面へ空気が通る状態を作ります。

良い根鉢は、外周に白い根が見えても、底で厚く絡み合ってはいません。セルの外へ長い根が伸びているなら、待つほど扱いやすくなるとは限りません。苗を抜く前に用土を適度に湿らせ、茎を引っ張らず、セル底から押し上げます。

鉢上げ・移植の詳しい工程は苗の植え替え(鉢上げ)のタイミングと方法で確認できます。セルトレイ側で大切なのは、根鉢が未完成で土が落ちる時期を避けることと、根が巻き切るまで放置しないことです。移植後は急な直射や強風を避け、新しい葉の展開を回復の目印にします。

セルトレイを選ぶ最終判断

セルトレイ選びは、穴数、用土、次の移植時期を一組で決めると迷いません。売り場で価格と最大株数だけを見るのではなく、「何株を育てるか」「毎日どこまで見られるか」「何日後に鉢上げできるか」を先に書き出してください。

このガイドで3つだけ覚えるなら、次の順です。

  1. 20〜40株で初めてなら、72〜128穴を起点にする。 小セルの省スペース性より、水分管理の余裕を優先します。
  2. 清潔な種まき用土を均一に入れるが、押し固めない。 保水と排水に加え、根へ空気が届く空隙を残します。
  3. 根鉢がまとまり、根が底から伸び切る前に次へ移す。 本葉だけでなく、セル底と抜け方を確認します。

セルトレイは、苗づくりを自動的に成功させる容器ではありません。しかし、株ごとの発芽、水分、根の進み方を見える形に分ける道具としては有効です。穴数を管理頻度に合わせれば、平鉢で根が絡む失敗を減らし、種まきから鉢上げまでを一つずつ判断できます。

出典

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花の日記 編集部

園芸学・植物学の資料、種苗メーカーや公的機関の栽培情報、農薬登録情報を突き合わせ、出典をたどれる形に再編集する花とガーデニングの編集チームです。編集方針を見る